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Channel: メルボルン発M.A.便
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心満記

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今日は、あいにくの曇り空。メルボルンの大きな空は、すっかり冬の装いで、2年目のcycleに、だんだんと体が馴染んでくるのを感じています。ここにも微妙な季節の移り変わりがあると体感して、なんだかうれしくなる今日この頃です。 さて、話は先日一段落した大学院の授業へ。 6月の2週目には、提出する課題も無事終了し、この辺りで、辿ってきた道を、温かいまなざしで少ずつ振り返ってみようと思い立ちました。 受講した4つの授業は、それぞれにそれぞれの味があり、どれ1つとて、「あ〜あ、この授業取らなきゃよかったあ」と後悔するようなクラスはありませんでした。 まずは、そのおもしろさと教授の質の高さで、ダントツだった映画のクラス。求められているものが、非常に高い分、それに応えようとすればするほど、自分の表現力・思考力・批評力が最大限にまで引き出されていくと実感できたのは、なんといってもこのAdrianのクラスです。 「世界をこう見ると、またまた楽しくなってくる」という、人生の楽しみ方秘伝のタレがたくさん詰まった授業展開に、頭が落ちる寸然まで頷かされたこと然り。中でも、これまで、具体的な理由なく毛嫌いしていたHollywoodやSFものに、ぐぐぐっと近づいて、「どんなものにもおもしろさはある。ただ、それを見る目があるか、ないかだけ」ということを遅ればせながら痛感しました。 中でも、押井守監督の'Ghost in the Shell'は、これまでの、不運とも言える私の異色趣味に頼っていたら、DVDのpackageにさえ触れることもなかった、とおおおい存在でしたが、今回の授業を機に、3回観ても飽きることがなかった(同じ映画を2回以上観るなんて、今までなら考えられないのに!)忘れられない映画となりました。 好きか嫌いかという問題以上の、何か常日頃気になっていた問題の核心に触れたような瞬間に、どきりです。大学の時に、無理矢理仲間に入れてもらった哲学の演習のクラスで読み込んだ、デカルトの「方法序説」が、ずっと頭にこびりついていたということもあって、心と体、精神、そして日本人が抱えるidentityの問題、文化を超越した普遍的で、且つ現在的な問いかけを、功名に孕んだ作品に、ため息。読めば読むほど、また新たな視点が立ち現れるという、するめいかのような映画に出会って、食わず嫌いの限界を悉く見せつけられた思いがしたのでした。 Adrianの「ああああ、そうそうそう、それが言いたかったのよ」「いやあああ、その表現、それを探していたのよ」というような言葉の名人芸に感嘆。ぽろぽろと惜しみなく分け与えてくれた知識と刺激に最大級の感謝です。厳しいけれども、厳しいなりの理由はある、ということで、得たものは◎でした。 一方で、outputにもかなりの満足感を覚え、クラスはやっぱり相乗効果なのね、と気の力を感じる日々。議論が深くなればなるほど、自分の言いたいことが増え、そしてすんなりとそれに貢献することができる。相手の打った当たりのいいボールを、またスコーンと返せた時の快感。そんな、目には見えない、けれでもしっかりと感じることのできる瞬間、瞬間に、単純ながらも「生きててよかったあああ」と思ってしまうのでした。

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